ヴィンテージ情報 <第一弾>
《フランス編》一喜一憂の2011年ヴィンテージ
トリッキーな天候に翻弄されたボルドー地方はソーテルヌとカベルネの年となった
無秩序な天候によって持ち遊ばれた2011年であった。冬が終わったかと思うと、夏を思わせる気温の高い春の到来となった。
4月は非常に熱く、乾燥した天候で、例年にない早さでぶどうが成長した。そして旱魃が5月から開花時期の6月まで続き、開花がうまくいかず、やっと結実したぶどうも、干しぶどうのようになってしまい25%程の減産となってしまった。
7月になると天候は一変し、何度もの暴風雨、そしてアントル・ド・メールでは数回の雹によって深刻な被害に見舞われた。その後はどんよりとした天候が続き、病害も広がり、ぶどう栽培者やシャトーオーナーの間で収穫を懸念する空気が漂った。
2011年ヴィンテージは最悪の状態になるのではとの心配が募っていった。9月5日に最初設定された収穫日は延期となり、畑に出て悪い房を除き、熟したぶどうだけを摘み取るという努力が必要となった。天候は後半になってやっと回復し、メルロは9月12日から16日に掛けて、そして、カベルネは9月の最終週に収穫を終えた。
時間を掛けて、丁寧に選別しながら収穫することだけが良いワインを造る方法であった。
メルロとプティ・ヴェルドは夏場の降雨と高温多湿によって灰色カビが発生し、被害が出てしまった。ポイヤックやサン・ジュリアンの成長の遅いカベルネ・ソーヴィニョンは小粒で皮が厚く、タンニン、アントシアンが豊富な、凝縮されたぶどうが収穫され、豊かな味わいとなったが、2009年や2010年に比べると、豊潤さ、深みに掛けるワインとなった。赤ワインと辛口白はボルドー全体を通して決して満足できるヴィンテージは無かった。特に辛口の白、特にソーヴィニョン・ブランは非常に難しい年となった。
一方、唯一甘口のソーテルヌは素晴らしいワインができた。ソーテルヌとバルザックは、春の暖候期とその後の冷涼で湿った天候によって貴腐菌が速くしかも等しく繁殖し、酸度が高く糖度もしっかりとした満足できる品質となった。
雹害によって30%近く収穫量が落ちたモンラッシェ
ブルゴーニュ地方の2011年ヴィンテージはまさに無秩序な気候によって翻弄されたと言わざるを得ない。4月と5月は夏のような気候で、7月に入ると秋の気候となり、夏が8月に戻って来たことであった。ぶどう栽培者にとっては、灼熱、干ばつ、雨、そして病害との戦いが強いられたチャレンジングな年であった。その為、ぶどうの収穫は早期に迅速に行わなければならなかった。夏のように日射が強く、乾燥した春には、だれもが平年より早い8月後半の収穫を予測した。6月下旬までの旱魃によるぶどうの水分の減少は発育を遅らせ、糖度の上昇を妨げ、収穫量の減少となってしまった。この間、5月13日にはペルナン=ヴェルジュレスとアロース=コルトンで、7月12日はモンラッシェとシュヴァリエ・モンラッシェに雹が降り、30%近くも生産量が落ちてしまった。何とこの地区の7月、8月の降雨量は平均の2倍にまで達していた。
まだ、コート・ド・ニュイのほうがコート・ド・ボーヌより雨量は少なかったが、8月後半からの気温と高い湿度を保った気候状況により灰色カビが蔓延し、収穫まで何度も灰色カビに侵されたぶどうの除去が必要となった。コート・ド・ボーヌのピノ・ノワールも灰色カビの害を被ったが、一方シャルドネは意外と被害が少なく収穫時期を迎えることができた。多くのぶどう栽培者は8月の終わりまたは9月に入ると直ぐに収穫を始めた。最終的には生産量は平年の20%から30%は減少し、潜在的なアルコールが12パーセントから12.5パーセントと低く、補糖が必要となった。北部のシャブリ地区のぶどうは成熟が悪く、春の異常高温によって酸の低下となり、どのように酸度を保ちながら成熟させるかの努力が必要であった。
酸が綺麗で果実味豊かなワインとなったアルザス地方
卓越した年とは言えないが十分満足できるヴィンテージとなった。冷たく、湿った夏の後に、8月中旬から暖かかく素晴らしい天候が、5週間も続き、ぶどうが十分成熟することができた。既に出来上がったワインの試飲を済ませた生産者からは2011年が非常によい品質のヴィンテージになるであろうとの報告を受けた。春は暖かく乾燥し、急速に成長がすすみ、開花も平年より早く始まった。しかし、それは長続きせず、逆に夏は雨が多く、冷たく、まるで悪い年の秋のようであった。その間は雨が多かったため、ぶどうの成長を助けたのであるが、同時にカビの発生を促し、農薬の散布が必要となった。その後、8月の半ばに差し掛かると突然雨がやみ、気温が上昇し、なんと10月半ばまでずっと盛夏のような気候が続いた。ほとんどのぶどう栽培者は9月の最初の週に収穫を始め、恵まれた条件のもと迅速に収穫を続けることができた。グラン・クリュの畑はAOCアルザスの収穫が終わってから、中一週間ほどおいてから行われるのが常だが、今年はこの休止期間を持たず続けて収穫が行われた。生産高はこの3年では最も多かった。2001年のワインは酸と果実味が豊富で芳醇な味わいを持った満足できる結果となった。
ヴィンテージ・シャンパーニュの生産は不可能
シャンパーニュ地方もまた、長年ぶどうを栽培している人々でも理解できない今までにない変則的な年に翻弄された。春には2003年を彷彿させるヴィンテージを思ったに違いないが、6月に入ると今度は秋から冬のような気候となった。6月から2か月間、温度は平年をはるかに下回り、頻繁に降雨に見舞われた。そして、夏の間も気温が上がらない中、シャンパーニュ地方では最も早い収穫開始日である8月19日に早くも収穫を始めた生産者もいた。殆どの栽培農家は数日後に収穫に入り、夏のヴァカンスはお預けとなった。
生育期の初頭の良い出だしはその後の天候不順によって、ぶどうの糖度が上がらず、地域によっては同じ村の中で、しかも隣の畑であっても生育にばらつきが起きた。それでもシャルドネはほぼ均一に成長し、品質も安定していたようであるが、毎日のように成熟の度合いをチェックし、そのたびに今年の収穫予定を変更しなければならなかった。そして特にピノ・ノワールとピノ・ムニエには品質への影響が強く出た。
シャンパーニュ委員会(CIVC) は1ヘクタールあたりの収穫量は12,500キログラムに設定したが、多くの生産者はそれよりかなり低い、約10,500キログラムの生産高でしかなかった。結局は生産量を落としてもセレクションをかなりしっかりと行う方法しか考えられなかった。2011年はヴィンテージワインを造る品質では無く、殆どがノン・ヴィンテージのレベルに落ち着くだろう。
産地によるばらつきが出たヴァル・ド・ロワール地方
ロアール渓谷も、2011年にフランスのワイン地域のほとんどが被った悪天候は免れなかったものの、結果は地域によって異なるが一部期待が持てる産地があった。ヴァル・ド・ロワールのように広い範囲のワイン産地の場合は、地域によってその作柄が異なるのはむしろ当り前と言える。春には夏の気候があり、夏に秋の気候となり・・と、ここまでの異常気象は生産者にとって異例の年であった。4月と5月は、熱く、乾燥した春の到来による速い成長、そして、冷たく、雨量の多い7月と8月は大混乱となった。ぶどう栽培者にとっては適切な時期に収穫ができるのかどうか、そして、腐敗菌によってぶどうの収量が大幅に減るかどうかの心配が募った。
サンセールのぶどう畑では腐ったソーヴィニョン・ブランの房を取り除きながらの収穫作業が8月の終わりから10月の後半まで行われた。ピノ・ノワールは熟成するのを十分に待って行ったが収穫量は編年の4分の3程度であった。品質に関しては丁度2010年と2009年の間ぐらいで、2009年よりはしっかりとしていた。
ロワール・ヴァレーの中央部にあるヴーヴレも多くの天候による問題が起きた。7月と8月の雨量は信じられないほど多く、1月から6月の量をこの2カ月間で上回ってしまった。雨によって腐敗菌が繁殖し、今までにない早い収穫日の9月8日から始めざるを得なかった。甘口ワインのぶどうですら、9月の終わりには収穫を終了させなければならなかった。例年よりかなり早い開花であったものの、シノンのカベルネ・フランは秋の雨にも皮が硬いカベルネ系のぶどうのお陰での白の品種よりは幾分カビの被害を逃れることができた。2011年はカベルネ・フランの年と言える。シュナン・ブランは驚くことに酸度は低いが、9月の素晴らしい天候が幸いし収穫量はいつもより多かった。9月初めにシュナン・ブランにボトリティスが増殖し、収穫を始めなくてはならなく、コトー・デュ・レイヨンとカール・ド・ショームの貴腐ワインは糖と酸度のバランスを得ることは難しく、満足できる貴腐ワインを造ることはできなかった。
グレート・イヤーとなったコート・デュ・ローヌ地方
3年続けての素晴らしいヴィンテージとなった。一部、雨や灼熱の太陽による干ばつの被害はあったものの、北部も南部も素晴らしいヴィンテージを享受した。
シラーの産地のコート・デュ・ローヌ北部では、7月の悪天候によって品質を危ぶんだ生産者もいたが、最終的には誰もが勝れたヴィンテージに満足した。8月中旬からぶどう畑での病害の心配が無くなり、9月上旬には高品質のワインが造られることを確信できる状態となった。9月初めの2回の豪雨によって生産量はやや減った感もあるが、グリーンハーヴェストを行うことによって品質への影響は殆どなかった。白ワイン用品種は9月上旬の雨の前に収穫を殆どの生産者が終えていた。潜在的なアルコールは8月31日時点でコンドリューは14度以上あり、素晴らしいワインが期待できる。
ほとんどのフランスワイン地域と同様に、ローヌ南部も非常に暖かで、乾燥した春で始まり、ぶどうは急速に成長を始めた。7月は冷たく、生長速度は落ちたが、8月に入ると天候が回復し、ぶどうは順調に熟し始めた。そして、9月初めの降雨は運良くぶどう畑を冷やし、その後続いた長いインディアンサマーによってぶどうは理想通りの成熟度に達してくれた。やや早めに収穫することができ、酸がしっかり乗った、クラシックなスタイルのワインを造ることができた。初秋の天候の重要さを物語ってくれた年となった。シャトーヌフ・デュ・パプは1998年や2000年に匹敵する品質となり、コート・デュ・ローヌ南部は生産高、品質ともに満足できる結果となった。

